研究概要 |
DNA修復能の異なる細胞間、およびin vitroとin vivoでの放射線誘発突然変異の頻度と種類の違いを調べることを目的とした。 シャトルベクタープラスミドを用いて、マウス細胞とヒト細胞における紫外線によって起こる点突然変異の種類と頻度を比較した。DNA修復機構を欠損するA群色素性乾皮症(XP)患者細胞におけるG:C→A:Tトランジションの頻度はヒト正常細胞およびマウス細胞より有意に高かった。マウス細胞におけるこれらの値はXP-A細胞とは有意に異なり、ヒト正常細胞での値に近かった。この結果、マウス細胞はヒト正常細胞と比べてDNA修復能が低いにもかかわらず、紫外線誘発突然変異の種類と頻度は、修復を欠損するXP-A細胞よりもヒト正常細胞のそれに近いことがわかった。 XP患者の皮膚腫瘍のp53遺伝子の突然変異をPCR-SSCPで調べたところ、約半数に突然変異が生じていた。主たる変異は5′-TC、5′-CC部位での3′側のC→Tトランジションであった。この結果はin vitroで見られるUV誘発突然変異の型と一致しており、XP患者の皮膚腫瘍のp53遺伝子の変異は太陽光UVで誘発されたと考えることができる。Ha-ras、Ki-ras、N-ras遺伝子の変異は調べた限りでは見いだせなかった。 正常Ha-ras配列を持つプラスミドに紫外線照射してBALB3T3細胞にトランスフェクトし、トランスフォーメーションを指標にしてras遺伝子の突然変異を検出・同定すると、最も多い変異は12、13番コドンの5′-TC,5′-CC部位でのC→Tトランジションであった。この結果はin vitroで見られるUV誘発変異の型と一致した。
|