色素性乾皮性(XP)のC、F群細胞において欠損している遺伝子の存在している染色体を明らかにするために、微小核融合法を利用した単一ヒト染色体導入を行った。ネオマイシン耐性遺伝子でマークされた正常ヒト染色体を各々1本だけ持つマウス細胞を過剰コルセッミド処理し、サイトカラシンを含むメディウム中で遠心することによって染色体を1本だけ含むような微小核を分離した。これらの微小核をSV40で株化されたXPC群またはF群細胞と融合させ、ネオマイシンで選択することにより目的とするヒト染色体の導入された細胞だけをクローン化した。これまでに、C群細胞については正常ヒト染色体1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、15、19、20番を導入し、各々の染色体が導入された細胞のクローンを10以上づつ解析したが、すベての染色体導入細胞は親株のXPC群細胞と同様の紫外線感受性を示した。すなわち、XPC群細胞で欠損している遺伝子はこれらの染色体上には存在しないことが示唆される。今後はまだ導入実験を行っていない9種の染色体について解析を継続していく必要がある。XPF群細胞に対しては正常ヒト染色体9、12、15番を導入したが、9、12番染色体を導入した細胞は全て親株のXPF群細胞と同じ紫外線感受性を示した。しかし、15番染色体を導入したクローンの中に一つだけ正常細胞とほぼ同程度の紫外線低抗性を示すものが得られた。得られた紫外線低抗性クローンがまだ一つだけなので確実なことは言えないが、15番染色体にXPF群細胞で欠損している遺伝子の存在する可能性がある。今後はこのようなクローンの出現が再現できるかを確認するとともに、得られた紫外線低抗性クローンのDNA修復能を細かく解析し完全に正常細胞と同じに回復してるかを明かにしたい。
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