研究概要 |
本年度の計画は,(a)被爆試料の収集と保管,測定,(b)^<152>Eu/Eu比放射能決定のための放射化分析,(c)中性子の計算コードMCNPの計算コードの計算精度の確認(ベンチマークテスト)であった.(a)に関しては,鬼瓦2点,日赤病院のタイルとコンクリートを収集した.(b)の^<152>Eu/Eu比放射能の測定についてはほとんど測定を終えた.遠距離の試料や深さ分布の試料で深い位置にある試料でまだ継続中のものもある.(c)の計算コードの精度確認は広島大学原医研の_<252>Cf核分裂中性子を使い実験を進めている.透過材料として,水,ポリエチレン,塩化アンモニウム,花崗岩を使用し,MCNPコードの計算値と比較した.中性子の検出にはAu(n,γ)反応,とNi(n,p)反応を使った.その結果1/1000,1/10000までの減衰状態(爆心から1500m以上に対応)にまで15%以内(驚くほど良い)で一致した.さらに,透過材料としてナイロン,アクリルを使って実験を進めている.この材料は固体であるので取り扱いが容易である.この研究の目的は2点ある.それは透過材料のはじめに鉄の10cmの板をおき,広島原爆の本体に使われた鉄を模擬することと,広島原爆の被爆試料の中で測定されるEu,Coを実際に放射化することである.これも実験結果と計算結果は良く一致していて結果はまもなく発表する.これにより原因はほぼ広島原爆の本体にあることが突き止められた.現在はMCNPコードを使って原因を追求している.原因として詳細計算は継続中であるが,従来からのDS86では広島原爆の爆発のはじめの過程で,原爆本体が破壊される以前に中性子が放出され本体の鉄と反応したとしている.しかし,一部は破壊の途中でも放出が起こり,裸の核分裂中性子が直接出てきたとすれば良く説明できる事が分かってきた.
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