研究概要 |
放射性核種に対する有効な収着性能と処分の為の安定な形態に容易に変換できる性質を併せ持つ無機収着材が開発できれば、放射性廃液の合理的な処理処分システムの構築が可能となる。本研究では、含水酸化チタン^<IV>-ケイ素(TS交換体)及び含水酸化チタン^<IV>-ジルコニウム(TZ交換体)がこの目的に利用できるかを判断する為に、構成金属中のTiモル分率が0.5のTS交換体、及びTiモル分率が0.5と0.7のTZ交換体におけるCs^+,Sr^<2+>,Co^<2+>,Eu^<3+>,Th^<4+>,UO_2^<2+>を対象元素とした収着特性と固定化性能を検討した。 TS交換体は低いpHから陽イオンを有効に収着するが、収着反応は主に解離したOH基による固定負電荷とイオンとの静電相互作用に支配される為に、アクチノイド元素と典型金属との相互分離の程度が低い。TZ交換体では、OH基の塩基性がより高い為に遷移金属イオンがOH基との配位結合形成によって選択的に収着されるので、アクチノイド等の群分離が可能と判断される。しかしTZ交換体の収着容量はTS交換体よりかなり小さく、特に典型金属に有効な収着材とはなり得ない。対象元素を収着したTZ交換体を1100℃で熱処理した場合には、Cs^+やUO_2^<2+>の一部(30-60%程度)が可溶性の単純な酸化物になり固定されないが、その他の元素は不溶性のチタン酸塩に変換される(溶解割合<0.3%)。TS交換体では、低い温度の熱処理(600℃)に於いても、全ての元素の水中或いは0.01M HNO_3中での浸出率が大きく減少する(溶解割合<2%)。これは、低い温度でTS交換体の内部構造が緻密なものに変化すること、更に800℃以上ではTZ交換体に固定され難いCs^+やUO_2^<2+>がtitanium silicateに変換される為である。 以上を総合すると、TS交換体はTZ交換体に比べて収着容量が大きくかつ種々の元素を固定できるので、廃液からの放射性核種の分離と固化体調製を一連の操作で行う放射性廃液の処理法への応用が期待できる。
|