一般に大気圏に放出された微量の放射性核種は、大気浮遊塵とともに浮遊し、降水とともに地表に降下する。また直接排水に放出された場合は土壌と吸、脱着を繰り返して地下水系にはいり、生物圏に移行することになる。特にヨウ素は核分裂収率が大きいこと、環境中で種々の化学形をとること、生体内で他の放射性核種とは異なる挙動をとることが知られている。 そこでヨウ素の土壌中での挙動を研究するために、本年度は、 1)東海村周辺の各種の土壌を採取した。 2)I-125の化学形をI^-、IO_3^-に調整し、トレーサー実験によって、各土壌について、吸着特性を研究した。 3)それらの土壌の特性を分類し、ヨウ素の吸着率との関係を研究した。 4)これまでに開発した長半減期のヨウ素-129の分析法を改良し、高フォールアウト地域の土壌の分析を行なった。 5)土壌の母岩である各種の粘土鉱物について、ヨウ素の吸着特性をしらべた。 その結果、ヨウ素は粒度の小さいものに吸着しやすいなどの他の放射性核種と同じ挙動をとる傾向のほかに、粘土、有機物の含量の多いものに吸着しやすい傾向があるものの、どの成分がおもてに吸着を律しているかは明確にならなかった。各種の土壌についての長半減期の放射生ヨウ素の深度分布から、表層に多く留まっていることがわかった。この傾向は、他の陽イオンで存在すると考えられる放射性核種よりも顕著で、海岸のような砂質の土壌では深部まで進んでいることから、有機物との関連が示唆される。ただ、有機物のどの成分かの特定が困難で、現在、この点を明らかにする方法を考案中である。また、粘土鉱物には特にヨウ素を吸着するものはないことがわかった。
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