放射性ヨウ素は水溶液中では、陰イオンのヨウ化物イオンまたはヨウ素酸イオンの形をとり、他のPu-239、Cs-137など陽イオンで存在する長半減期放射性核種とは異なる挙動をとると考えられる。一方、環境循環の初期にある土壌の主成分は表面が負に帯電する粘土鉱物で、陽イオンの吸着は予想されるが、陰イオンのヨウ素は吸着せず、地下水へ溶出していくとされていた。しかし、福井県奥越高原の土壌においては、Pu、Csなどは下方に移行し、ヨウ素-129は表層土壌にとどまっていることがわかった。そこで、トレーサー実験によってヨウ化物イオンの土壌中の挙動を調べた。土壌試料は福井県の奥越高原の山林で採取した表層土壌で、比較のために、東海村の砂質の土壌、つくば市の農水省農業環境技術研究所で採取した畑、水田の土壌を用いた。各試料については、まず、pH、粒径分画、加熱または滴定による有機物の定量、培養法による生物量の測定などを行い、土壌の性質を調べた。その結果、奥越の土壌は水分(70%)と有機物(22%)が多く、東海村の砂は粗砂(粒径;0.42〜0.2 mm)が約80%であった。I-125(半減期60日)を含む溶液から土壌への吸収挙動をバッチ実験で求めた。吸着の分配比はほぼ10日で一定になり、無担体では分配比の大きい順に畑、水田、奥越、砂となり、砂以外は95%以上吸着することがわかった。そこで、110℃乾燥、400℃での灰化、γ線照射やクロロホルムくん蒸での殺菌処理などを行って、土壌の各成分についての分配比を求めたところ、ヨウ素の吸着には粘土鉱物などの無機成分や有機成分とともに、微生物の影響を無視することはできないことがわかった。
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