およそ10 KeVから 1 MeVの中性子エネルギー範囲に互って、アンフォールディングの必要がなく、パルス波高分布から中性子エネルギースペクトルを直読することが可能な、2重計数管方式全エネルギー吸収型中性子スペクトロメーターの研究開発を実施した。 同軸2重円筒構造を有し、2種類の異なる計数管から構成される中性子検出器を設計・製作した。この内、容積約5リットルの外側の多線陽極型反跳陽子比例計数管を組み立て、これに純度99.9%のプロパンガス、さらに、エネルギー校正用として、約4%の^3Heを添加した混合ガスを3気圧で充填した。その結果、1 MeVの中性子に対しても10%程度の高い水素による弾性散乱確率を得ることが可能になった。熱中性子を照射してパルス波高分布を測定すると、764 KeVのエネルギー校正点において、最適動作電圧3.2 kVで22%のエネルギー分解能が得られた。中性子信号とバックグラウンドγ線信号との間で、パルス立ち上がり時間の違いを利用し、波形弁別を行なった結果、約80%のγ線成分除去が可能になった。 反跳陽子計数管の内側に市販の高圧力^3He計数管を組み合わせ、速中性子が外側計数管で反跳陽子信号を発生してから内側計数管で捕獲されるまでの時間分布を測定し、90%以上の確率で同時計数するよう、各計数管によりトリガーされる同時計数ゲートのパルス巾および遅延時間を決定した。これを基に、ディジタル信号処理回路を設計・製作し、同時計数信号で反跳陽子パルスの波高分析を実施するシステムを構築した。 大型計算機を用いて、スペクトロメーターのエネルギー応答関数をモンテカルロ法で計算した結果、対象とする中性子エネルギー範囲に互って、鋭い単一ピークが得られることが確認された。検出効率は10-200 KeVの中性子に対して約0.002%、また、γ線除去率は実測の結果99.99%以上になることがわかった。
|