研究概要 |
中性子照射中の高集積密度半導体記憶素子試科から、メモリーセル個々の状態データをIn-situで読み取る装置を製作した。この装置は測定室にセットする中心のコンピューターシステム(PC-9801他)と、中性子照射室に持込む耐放射線性を考慮したRAMドライバー回路で構成されている。これまでに、16KビットからIMビットまでの代表的な数種類のCMOS-SRAM-ICを14-Mev中性子で照射し、本装置で試料ICの中性子誘起リフトエラーのパターンと発生率を分析した。いずれの試料ICについても、中性子核反応によってメモリーセル1個のみに対応するソフトエラーが観測され、全ソフトエラー数は中性子フルエンスに正確に比例した。このことから、中性子核反応の影響が及ぶ範囲の大きさはメモリーセル1個以内であることがわかる。また、ソフトエラーの発生の比例定数、つまりビットソフトエラー断面積は、16Kと64Kビットの試科では2〜3×10^<-15>cm^2,256Kと1Mビットのものでは6〜9×10^<-14>cm^2であった。現在、さらに得られているソフトエラーデータと各試料メモリーICの材料や構造との関係について解析中であり、解析がうまく行けば中性子核反応の影響の及ぶ空間的な大きさや質的な効果の大きさ(たとえば中性子核反応に伴なう電荷生成密度分布)などについて多くの知見が得られると考えられる。また、中性子照射試料として、CCDのようなセル中の蓄積電荷量を測定できるような素子を用いれば、その電気的状態の変化から中性子核反応の効果のよりミクロなダイナミクスについても調べることがデきるはずである。
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