研究課題/領域番号 |
04680232
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
的場 優 九州大学, 工学部, 教授 (60037827)
|
研究分担者 |
納冨 昭弘 九州大学, 工学部, 助手 (80243905)
魚住 裕介 九州大学, 工学部, 助手 (00232801)
榮 武二 九州大学, 工学部, 助教授 (60162278)
|
キーワード | 原子核物理実験 / 冷却型半導体検出器 / 高エネルギー分解能 |
研究概要 |
本年度は、半導体検出器の高精度原子核物理実験への適用を目指して、その基礎的な研究・調査を行ってきた。その結果明らかになったこと及び今後の方針を以下にまとめる。 1.原子核物理実験に使用する目的で半導体検出器システムを冷却することは多く行われているが、それらの殆どは、検出器の安定動作・長寿命化を狙ったものであり、冷却することによる検出器自身の特性の向上に注目したものは意外と少ない。また、単純に冷却しただけでは特性が改善されないという報告もあり、冷却型半導体検出器システムの技術は確立しているとは言えない。 2.半導体検出器を冷却することにより、バルク中を流れる漏れ電流を小さくしてエネルギー分解能を上げることができる。これまで主として液体窒素温度を用いた冷却が試みられているが、材料的な要因からそこまで低温にすることは却って不利であるとの指摘がなされている。むしろ、-20℃程度までの冷却により大幅な漏れ電流の減少が観測されたという報告もあり、システムとしての実用性を考えた場合、この程度の温度領域での可能性を探った方が有利である。 3.半導体検出器システムの前置増幅器に使用されるFETの熱雑音は、一般にその温度が低下するのに比例して減少するとされるが、実際には素子ごとの個体差が大きく温度特性もかなりばらついている。素子によってはある温度以下では電荷の凍結によるキャリアの減少の為に、エネルギー分解能の劣化を招く場合がある。これらのことから、FETの熱雑音を小さくするには多数の素子について特性を調べて、よい特性のものを選択した後に適切な温度まで冷却して使用するのがよいと考えられる。 以上の様な観点から研究を進める為に、-60℃程度まで冷却が可能な半導体クーラを用いた冷却装置を製作中である。今後、この装置を用いて、半導体検出器の温度特性を詳細に調査する予定である。
|