近年SPECT装置の性能向上は著しいが、それでも解像力8〜10mm程度である。放射性同位元素標識化合物の開発や病態モデルの実験においては小動物を用いるため、解像力2mm以下の断層像を得る必要があり、今回、ピンホールコリメータを用いたSPECT装置の開発を検討した。 初年度にはピンホールコリメータによるSPECT再構成と画像表示のプログラムを作成し、孔径、回転半径など種々の条件下におけるコンピュータシミュレーションを行い、それぞれの感度、分解能を推定した。次いで、既設の検出器固定型のガンマカメラに簡易型の実験用ピンホールコリメータを着け、数種のTc-99m水溶液ファントムを用いて手動のスキャニングによる予備実験を行った。これよりほぼシミュレーションと同等の結果(分解能:2mm)を得た。最終年度には臨床用の4検出器回転型カメラに4個のピンホールコリメータを装着し、ファントムおよび小動物のSPECT像を得て、本装置の性能を評価した。1mmの孔径で、回転中心カメラ検出面、ピンホール間の距離がそれぞれ180mm、50mmの場合、1.65mmの解像力、116cps/kBq/mlの感度を得た。ラットの脳および心筋のTc-99m-血流トレーサを用いた実験でも鮮明な脳血流分布、左室心筋血流分布が描出された。また脳の神経伝達物質(benzodiazepine)の受容体トレーサ(I-123-Iomazenile)による動態SPECT測定においては局所ごとの時間放射能曲線が観察できた。 ピンホールコリメータを用いた本SPECT装置は小動物における放射性化合物の局所臓器分布を測定することができ、今後、新しい放射性医薬品の開発、また種々の病態モデルの研究に大いに貢献できると思われる。
|