日本列島において、鉱山地の閉山が相次ぎ、鉱山地市町の過疎対策、鉱山跡地の環境保全、鉱山遺物、遺構の保存など、各種の問題が登場してきたことは周知の通りである。本研究ではかかる諸問題の実態を具体的に検討するために、全国各地の主要な鉱山跡地とその関係市町村の実地調査を実施することを主眼とした。 昨年度(初年度)は北海道・東北日本の主要な鉱山跡地とそこ関係市町村を踏査したが、本年度の平成5年度は、主として九州・西南日本の主要な鉱山跡地とその関係市町村の実情を調査した。平成5年度踏査の市町村は次の通りである。〓すなわち、兵庫県生野町、山口県宇部市、愛媛県の新居浜市・別子山村、高知県大川村、福岡県の大牟田市・直方市・飯塚市・田川市・山田市・宮田町・穂波町、佐賀県の北方町・大町町、長崎県高島町、鹿児島県の串木野市・横川町・菱刈町ほかなどである。 かかる九州・西日本各地の鉱山跡地関係市町村を踏査することによって、閉山後の変容諸相が具体的に明らかとなり、それぞれが抱える諸問題の比較研究が可能となった。いうまでもなく、昨年度実施の北海道・東北日本の調査地事例と対比することもできるようになり、かかる比較研究を通して、過疎対策、鉱山跡地の環境保全や再開発などの方向が漸次明らかとなってきた。とくに坑道観光を軸とした再開発が目立ち、中津江村の地底博物館「鯛生金山」はその典型で、大分県の「一村一品」運動で脚光を沿びた。また白滝鉱山跡地を利用して「農業団地」、「畜産団地」、「教育・観光・レク団地」を造成し、過疎対策を推進する大川村などは注目すべき事例といえる。一方、ボタ山、地盤沈下、鉱滓ダム跡、露天堀り跡、鉄筋廃屋など、鉱害防止や環境保全にかかわる実態・対策について検討を加えた。
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