1.本研究では、地下水涸渇問題が生じている福井県大野盆地、昭和36年水害により被害を受けた長野県大鹿村を事例研究地域としてきたが、今年度は以下のような知見が得られた。 2.大野盆地に関しては、近年、夏季の地下水位の低下が著しくなったが、これは地下水涵養地域である扇頂・扇央部での耕地整理が完了し、用・排水路がコンクリート化されたこと、減水深が小さくされたことなどが原因の一つであることが明らかになった。地下水水位の回復には、ドイツで実践されているような川の自然再生化や涵養地域の景観生態的機能を高めることが必要である。 3.大鹿村に関しては、山村集落立地を景観生態的に分析し、36災害被害との関係を考察した。その結果、本村においては、地すべり立地型、山腹緩斜面立地型、段丘・崖錐・沖積地立地型に分類でき、36災害では主に段丘・崖錐・沖積地立地型集落に被害が集中した。地すべり立地型に被害が少なかったのは、本村の地すべり地が破砕帯地すべりであり、第三紀層地すべり地より発生の免疫期間が長いこと、また住民は、地すべり地でも基盤の安定した地形的に凸部に家屋を構えており、豪雨・土石流災害に強かったからと思われる。また災害復旧においては、鹿塩川流域では、コンクリート護岸ではなく、蛇篭による石積みでなされたが、災害後30年経過した今日においては、ハンノキやシラカンバなどの植生が定着するなど生態的な安定を示しつつあり、流域保全の機能を果たしていると考えられる。
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