| 研究概要 |
本研究は,沖積平野の地形形成と第四紀末期における環境変化とのかかわりを,その形成・堆積に環境条件が密接にかかわっている泥炭地・泥炭層を指標として分析・検討しようとするものである.本研究では,泥炭地の発達が良好な北日本の沖積低地を対象として,低地の形成・発達と,泥炭地・泥炭層の形成・発達とのかかわりを検討した。対象とした北海道道東の風蓮湖周辺の沖積低地では,堆積物の層序・層相の検討,珪藻分析,^<14>C年代測定等の結果から,約4500年前頃,2800〜2,100年前頃の二つの時期に湿原(泥炭地)が拡大したことが明らかとなった。このうち,前者は,風蓮湖からやや離れた風蓮川支流,後者は風連川本流における年代で,内陸側から海側に向けて二段階の湿原拡大期があったことが明らかになった。この二回の泥炭地の拡大期は,オホーツク海沿岸地域でこれまでに報告されている完新世後半の相対的海面低下期とほぼ一致しており,この地域における湿原の形成は,相対的な海面低下に伴って同時期に広い範囲で進行したと考えられる。さらに稚内市東方の声問川低地においても,ボーリング調査の結果から,泥炭地の形成が2回にわたって進行したことが推定でき,^<14>C年代測定結果の出るのを待って,完新世後半における泥炭地形成についてのより普遍的な結論を導きたい。
|
