研究概要 |
今年度は姶良カルデラ周辺の最終氷期最大海面底下期以降の細粒火山灰層の認定とこれから読み取れる噴火経過、そしてこの噴火が縄文海進とどのような関係にあるかを明らかにした。この地域には、この時期に、姶良カルデラ、桜島火山、住吉池・米丸マールの諸火山から、マグマ水蒸気噴火にともなう細粒火山灰層を5層認めることができる。新しい方から、鍋山テフラ(AD764年)、米丸スコリア(6,700年前),住吉池スコリア(7,000年前),桜島薩摩テフラ(1.1万年前),燃島テフラ(1.2万年前),桜島高峠4テフラ(約1.3万年前)である。鍋山テフラは火山灰と細粒軽石からなり、大隅半島中・北部に分布する。桜島の鍋山パミスコーン起源のもので、現在の海面に対応して生じた。住吉池・米丸スコリアは姶良カルデラ北西にある二つのマールから噴出したもので、前者は降下火山灰,後者はベースサージを生じた。汀線がもっとも内陸に進入した縄文海進最盛期に,当時の海岸付近で噴火が生じたことによる。 桜島薩摩テフラは,7層以上のメンバーからなり、その中に、マグマ水蒸気噴火起源のメンバーを2層認めることができる。下位から2層目が,ベースサージ堆積物で、給源から半径15km付近の範囲にまで分布し、ベースサージとしては極めて大規模なものである。下位から3層目に火山豆石を伴う降下火山灰があり、これは薄層ながら薩摩半島,大隅半島に広く分布する。鹿児島低地の試錐試料でみられる薩摩テフラと沖積層の関係を検討した結果,この時の海面は-50m付近にあったことがわかり,この時の火口の位置は,この深さ以下にあったものと解釈される。燃島テフラは姶良カルデラ起源で,ベースサージと降下軽石からなり,大隅半島北部に分布する。桜島高峠4テフラは,細粒石質岩片に富み,また火山豆石を含む火山灰層で,大隅半島中・北部一帯に広く分布する。
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