中世・近世の気候変動を日欧双方のデータを用いて復元することが、本研究の目的である。そのための方法として、まず日本の天候記録や気候災害記録から、「日本古気候データベース」(JAPANCLIM)を国際規格でまとめる。同時に、国際的な天候記録である「欧州古気候データベース」(EUROCLIM)を、日本でも利用できるようにする。この2つのデータベースから得た天候記録を用いて、中世の温暖期や近世の小氷期を日欧の間で比較検討し、グローバルスケールに準じた気候変動の分析を行う。 2年計画の初年度である平成4年度においては、以下のようにデータベースの整備を進めた。まず弘前藩庁日記をはじめとする天候記録や長期間の気候災害資料を、データベースのための基本的な資料とした。そのほかに、地域的な観点から多度津藩日記や八戸藩日記についても天候記録を収集整理し、データベースに加えた。本年度に、新たに改定された「欧州古気候データベース」の天候コードブックを入手し、またそのデータベース中の天候記録と日本のものとの対応関係から、日本の特性を考慮した特殊コードを補助的に作成した。さらに日本のデータベースから欧州のデータベースにデータを変換できるようにプログラムを作成した。 それらのデータベースを試験的に分析した結果、以下の成果が得られた。すなわち、天候記載方法についての歴史的変遷および地域的差異についての分析から、天気用語、記載時刻、記載精度などの特色が明らかになった。さらに歴史時代において顕著な気候変動のみられたマウンダー極小期(1675年-1715年)を例とし、日欧の気候変動の比較を行なった結果、冬季においては、日欧で類似の傾向がみられるが、夏季においては大きく異なることが明らかになった。
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