研究概要 |
我々はすでに、最大短縮速度に近い速度で短縮中の骨格筋のX線回折像について報告しているが(Yagi,Takemori&Watanabe,J.Mol.Biol.,1993)、本年度はX線回折像の短縮速度依存性について検討した。 実験は筑波高エネルギー物理学研究所の放射光実験施設のビームライン15Aで行った。試料には食用ガエルの縫工筋を用いた。X線回折像の記録には、時分割イメージングプレート露光装置を用いた。筋の短縮速度は、筋にかかる負荷を変えて調整した。負荷と短縮速度は、おおよそA.V.Hillの張力・短縮速度関係に従った。アクチンらせん由来の5.1nm層線、5.9nm層線の強度は短縮中に減少する。これはミオシンクロスブリッジとアクチンとの相互作用が、短縮中には等尺性収縮中に比べて減少するか、質的に変化することを示唆する。今回の実験では、これらの層線の短縮中の強度低下は、ほぼ短縮速度に比例して大きくなった。この結果から、クロスブリッジのアクチンとの相互作用が短縮速度の増加に伴って変化することが明らかとなった。 また、新たに開発されたイメージインテシファイアとCCDテレビカメラを組み合わせたX線検出器を用いて、比較的ゆっくりとした(毎秒筋長の15〜60%)長さ変化を筋肉に与えた場合のX線回折像の変化も記録した。この検出器を用いると、二次元のX線回折像をリアルタイム(毎秒60コマ)で記録することが可能である。実験はまだ初期段階であり、装置上の改善は可能であるが、現状でも5.9nm層線までの反射の強度はリアルタイムに測定できる。
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