我々は三重鎖DNAの生物学的意義を調べる目的で、三重鎖DNAに特異的に結合するタンパク質が結合する相手側のDNAに注目した。このようなDNA配列はポリプリン・ポリピリミジン配列と呼ばれ高等動物ゲノムに数多く存在するが、効果的なクローニングの方法はなかった。そこで、我々は、三重鎖形成能を利用して配列を濃縮し、クローニングする方法を考案した。この方法はビオチンラベルしたオリゴヌクレオチドをマグネシウムイオンの存在下でDNAと混ぜ、三重鎖形成を行い、三重鎖DNAのみをストレプトアビジンマグネティックビーズを用いて精製する方法で、この方法を用いて我々はオリゴヌクレオチドの配列を変える事によりポリ(dA)・ポリ(dT)・ポリ(dG-dA)、ポリ(dC-dT)及びポリ(dG)・ポリ(dC)タイプの三重鎖形成配列を精製しクローン化を行った。このうち、ポリ(dA)・ポリ(dT)を含むDNA配列についてさらに解析したところ得られたクローンの約60%がヒトのAluファミリーの一部である事が解った。他のクローンは未知の配列であり、ゲノム中のコピー数は数コピー以下であった。また、この様な配列にはDNAの多型が起こりやすい事が知られているが、調べたクローンでは確かに個体間で差が見られた。従って、この配列を含む部分において組み換え反応などの活性が高いと考えられるため、他のクローンについても同様に検討を行なっている。
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