我々は三重鎖DNA結合タンパク質を通して三重鎖DNAの生物学的役割について調べているが、本年度は我々の開発したMg^<2+>依存三重鎖アフィニティ・キャプチャー法を用いて結合タンパク質の作用する相手側のDNAを精製し、クローニングを行なった。この方法はMg^<2+>の存在下でビオチン化したオリゴヌクレオチドとゲノムDNAとの間で三重鎖を形成させ三重鎖形成能を有するDNAのみをストレプトアビジン・マグネティックビーズを用いて濃縮する方法で非常に効率良く精製が行なえるという利点を持つ。この方法を用い、ヒトのゲノムDNAよりポリ(dA)・ポリ(dT)、ポリ(dG-dA)・ポリ(dC-dT)及びポリ(dG)・ポリ(dC)配列を含むDNA断片をクローニングし、解析を行なった。前年度までにポリ(dA)・ポリ(dT)配列の解析結果を報告したが、本年度はポリ(dG-dA)・ポリ(dC-dT)配列について次の様な解析を行なった。(1)ゲノムDNA中での不安定性を調べるため個体間の多型を調べた。(2)世代間で安定に遺伝されることを見た。(3)いくつかのがん組織を調べ、正常細胞との間の変異を確認した。これらのことからポリ(dG-dA)・ポリ(dC-dT)配列はヒトのゲノム中において個体間で多型を示すほど不安定であることが解かり、多型マーカーとしても有用であることが示唆された。これらの結果はまとめて現在論文を投稿中(印刷中)である。また、ポリ(dG)・ポリ(dC)配列についてもクローニングを終え、解析を行なっている。
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