SPファージRNAのクローン化cDNAからA2蛋白質遺伝子領域を取り出してプラスミドpUC8にクローニングし、菌体内で同蛋白質を誘導合成した。A2蛋白質は外殻蛋白質の一種であるが、Qβファージでは溶菌蛋白質でもあることがわかっている。しかしながら、SPファージ蛋白質の産生は溶菌を引き起こさなかった。また、A2遺伝子の翻訳開始領域に対するアンチセンスRNA、および同遺伝子5'端部のGUC配列に対するリボザイムRNA発現クローンを作製した。SPファージがこれらの菌に感染すると、溶菌は抑制されるにもかかわらず、感染性子ファージ粒子の形成は阻害されなかった。従って、アンチセンスRNAあるいはリボザイムRNAによるA2遺伝子の発現抑制は効率が良くないこと、そしてSPファージA2蛋白質そのものは溶菌蛋白質ではないらしいことが推察された。しかし、溶菌には多量の同蛋白質が必要である可能性は残されている。さらに、外被蛋白質、A1蛋白質および複製酵素蛋白質についても、溶菌効果に見られなかった。 一方、A2遺伝子の塩基配列をプライマーとして、逆転写酵素を用いたPCR(polymerase chain reaction)を行ったところ、ファージ非感染菌から調製したRNAを鋳型とした場合にも、感染菌由来のRNAを鋳型とした場合に類似したDNAパターンが得られた。 以上の結果から、ファージA2遺伝子に類似した遺伝子構造が宿主細胞にも存在し、溶菌に関与している可能性が示唆された。
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