研究概要 |
平成4年度は、定常磁場下での生体高分子及び磁性流体の配向散乱実験を主に放射光X線小角散乱法を用いて行った。回析装置は高エネルギー物理学研究所放射光実験施設の酵素回析系を利用した。磁場印加にはこの光学系に合わせて設計、作成した小型強力永久磁石を使用した。この磁石は次の様な特徴を備えている。(1)磁場強度可変(0.7T〜2.0T)、(2)印加磁場と入射X線の方向が垂直、平行の両方向が可能、(3)広い磁場空間(400mm^3)、(4)小型かつ軽量(14×9×20cm,13.5kg)。生体試料としては、TMVウィルス、CGMMVウィルス等を用い、磁場印加後の配向の過渡的過程を、散乱パターンの経時変化として測定することに初めて成功した。磁石の特殊な設計と大強度放射光X線の利用により、このような測定が可能となった。 溶質分子間の相互作用の影響を抑えた希薄溶液系においては、分子の自由回転拡散とそれに対する分子構造の異方性及び磁場強度の依存性が明かに観測された。巨大分子内における蛋白質及び核酸の高次構造と分る異方性及磁性帯磁率の定量的解析が進行中である。また、従来の溶液散乱では不可能であった、溶質分子単体の構造異方性の抽出も現在検討中である。また、分子間相互作用が著しい濃厚溶液系においては、isometric相とnematic相の磁場配向過程に関して極めて興味深い結果が得られた。前者の相においては、自由回転拡散系にくらべて磁場の影響は認められないが、後者の相においては、著しい効果が観測された。これはnematic相から別な相への転移或いは、nematic domainの成長によるものなのか詳細は解析中である。裏面の研究成果の他、下記の発表を行った。(一部)M.Hirai et al.“Sdution Scattering under Magnetic Field using Spetially Designed Permanent Magnet for Synchrotron Radiation Source",14th International Conference on Biophysics and Synchrotron Radiation,Aug.30,1992,Tsukuba : 平井光輝他「巨大分子の磁場配向のX線小角散乱」日本生物物理学会 11/4,1992,阪大・基工
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