研究概要 |
高度好塩菌ハロバクテリアの細胞膜にある光駆動プロトンポンプのエネルギー論的分子機構を明らかにする一環として,7本の膜貫通α-ヘリックスをつなぐループ領域にS-S結合を導入したプロトンポンプの構造安定性と機能変化を調べる。そのために、S-S結合を導入の可能性を検討した。 S-S結合導入によってポンプ蛋白質の構造形成が損なわれることのない領域を探すため,アーキオプシン-1と2(^aO-1と^aO-2)からヘリックス領域(ヘリックスE,F,EとF)を置き換えた種々のハイブリッド^aO,および,EFループ領域に数アミノ酸残基の挿入あるいは欠失を与えた変異^aOを大腸菌で発現させた。ヘリックス領域の置換はクロモホアの形成に影響を及ぼさなかったが,ループ領域へのアミノ酸の挿入あるいは欠失はクロモホア形成速度とその収率の低下をもたらし,さらに,再構成色素の光化学反応様式も大きく変えた。従って,EFループ領域への変異導入は構造形成を損なう可能性がある。 ヘリックスBとC,及びFとGをつなぐループ領域にCys残基(L66C,V199C)を導入した変異バクテリオロドプシン(bR)を好塩菌で発現させたところ,紫膜の形成能と光化学反応は野生型と同様であった。そこでS-S結合の有無をSH試薬との反応性から調べた。その結果,199番目に導入したCysは蛋白質表面に露出しておらず,そのため,S-S結合も形成できないことがわかった。これは,Henderson等によって提出されているbRの構造モデルに再検討が必要であることを示している。今後Cys導入位置の再検討と系統的なCys導入変異体の作成が必要である。
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