G-アクチンは二価性試薬m-maleimidobenzoic acid N-hydroxysuccinimide ester(MBS)で処理すると塩存在下でも単量体であるが、ミオシンフィラメントに頭部当り2モル結合することを発見している。この結合がS1の25K/50Kトリプシン切断部位でおこり、2番目が50K/20Kでおこることが示唆された。これら2つの切断部位はF-アクチンとの結合にも関与した。今年度はMBS化学架橋法を用いて、ミオシン頭部のアクチン結合部位がATPにより変位するかを調べた。MBS反応を停止しないでMBS-アクチンとS1を混合すると見かけ上180K架橋物ができる。ATPまたはADP存在下では180Kと140Kができ、140KはSH1修飾S1では形成されないのでS1のSH1残基とアクチンとの架橋と思われる。ファロイジンで重合させたMBS-F-アクチンでは同様にヌクレオチド非存下やADP存在下では180Kができ、ATP存在下でのみ180Kと140Kができた。アクチン単体・S1とF-アクチン・S1の結合はよく似ており、特にATP存在下のF-アクチン・S1はATPまたはADP存在下のアクチン単体・S1の結合に似ていると考えられる。そこでアクチン単体・ミオシン頭部の構造を知れば、F-アクチン・ミオシン頭部の構造を推定できる。ATP非存下でアクチン単体と架橋したHMM分子を電顕観察するとミオシン頭部のやや先端、ロッド接合部から14.3nmにアクチン結合が見られるが、ATP存在下で架橋した場合は約1nm短くなった。このことはアクチン・ミオシン接触面がATPによりずれることを示唆している。現在X線溶液散乱、結晶化により結合立体構造の詳細を明らかにする試みを進めている。
|