研究概要 |
ニワトリリゾチームの全部で8個のシステイン残基を色々の組み合わせでセリンあるいはアラニン残基に置換した3-SS体6種について、2.5mgから10mgスケールでの大量の再生反応のための改良を行った。再生後の濃縮については、MWCO値5,000から10,000の膜をもちいた限外濾過法が有効であった。疎水性担体をもちいたクロマトによる濃縮の有効性についてはまだ結論が得られていない。精製については、大口径の逆相カラムの使用が有効で、一度にmgスケールの再生精製物を得ることが可能となった。ただし、△4ならびに△4Alaについては、他の3-SS体と比べて蛋白の物性の変化があるらしく、C4カラムをもちいての他と同一のクロマト条件では精製物の収量が一桁近く低いという問題が見いだされた。。試験的なカロリメトリ測定の結果は、昨年度の遠紫外部円二色性測定によって推定した各3-SS体の熱力学的安定性の序列と一致するものであった。天然状態と変性状態の間の比熱の差は4-SS体と同定度であり、3SS-体の天然状態はいわゆるmolten globule状態ではない事がさらに確認された。しかし、測定pH点を増やし、より正確な比熱差ならびにエントロピー差を求めるのは今後の課題である。一方、各3-SS体の再生の最適条件を検討したところ、その最適温度は個々のfolded状態の熱安定性と綺麗に相関している事が明らかになった。この事は、種々の改変蛋白質の再生条件の最適化における基本原則となるであろう。また、△1、△2、△3の再生効率はほぼ同様の温度プロフィルを示し、グリセロールによる再生促進効果を受けやすい。他方、△2Ala、△4、△4Alaはそれよりも再生効率が二倍以上高く、グリセロールによる促進効果を受けにくい事が示された。さらに再生のキネティクスにおいては、SS結合30-115を欠いた△2が最も再生速度が遅く、構造形成におけるこのSS結合の重要性が示唆された。
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