ニワトリリゾチームの8個のシステイン残基を色々の組み合わせでセリン残基に置換した3-SS体4種(SS結合の欠損に応じて△1、△2、△3、△4と命名)、ならびにアラニン置換体2種(△2Ala、△4Ala)を、人工合成遺伝子の大腸菌内での発現により作製した。封入体中に得られた発現産物は2段階のカラムクロマトグラフィにより精製した。還元および酸化型グルタチオンならびにグリセロール存在下、低温条件にてそれらの再生を行った。各3-SS体の再生の至適温度は円二色性の温度依存から知られる個々の改変蛋白のfolded状態の熱安定性と相関している事、またこれらの再生反応はグリセロール濃度に依存した至適温度を持ち、それはグリセロールによるfolded状態の安定化と相関している事がわかった。3-SS体4種の安定性は、△4〜△3>△2>△1の順で、SS架橋ループサイズからの予想通りであった。試験的なカロリメトリ測定によれば、天然状態と変性状態の間の比熱の差は4-SS体の場合と同定度であった。測定pH点を増やし、正確な比熱差ならびにエントロピー差を求めるのは今後の課題である。△4は天然リゾチームより溶菌活性が高いが、その活性の温度依存性を調べた所、天然型に比べて低温側での活性が相対的に高くなっている事がわかった。△1、△2、△3の再生効率はほぼ同様の温度プロフィルを示し、グリセロールによる再生促進効果を受けやすい。他方、△2Ala、△4、△4Alaはそれよりも再生効率が二倍以上高く、グリセロールによる促進効果を受けにくい。さらに再生のキネティクスにおいては、SS結合30-115を欠いた△2が最も再生速度が遅く、構造形成におけるこのSS結合の重要性が示唆された。また、2-SS体6種、ならびに1SS体4種の遺伝子も合成し、その発現ならびに産物の精製をおこなった。
|