研究概要 |
第2次分での交付であったため、試料作成と一回の実験を行ったのみである。以下に、その概要をのべる。 1.試料作成について 好熱菌ATPaseのα、βの各サブユニットを発現させるように遺伝子を組換えられた大腸菌を軽水培地及び重水培地で培養することで、通常のサブユニットに加え重水素化されたサブユニットも大量に得た。それらのサブユニットを再構成することにより、重水素化されたサブユニットを含む好熱菌ATPaseの活性をもつ六量体α_3β_3を得た。それらは重水素化された各サブユニットをαd,βdとするとき、次の四種類の六量体α_3β_3、αd_3β_3、α_3βd_3、αd_3βd_3である。 2. 実験について 中性子小角散乱の実験は、東海村の日本原子力研究所の改造3号炉に設置された東京大学物性研究所の装置を用いて行った。まず予備的な実験として、得られるデータの精度がどの程度かを把握するために、通常の軽水素のままの好熱菌ATPase(α_3β_3)のMg-ATPの存在下および存在しない状態で、測定を行った。その結果、過去の中性子及びX線小角散乱の実験で得られたデータより非常に質が良く、より高角度側の散乱強度も精度良く測定ができた。これにより各状態での構造をより詳しく調ベることが可能と思われ、現在このデータの解析中である。今後、重水素化された試料等を用いて調べることで、目的とする好熱菌ATPaseの機能と構造の関係を明らかにしていく予定である。
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