1 研究目的:精製アクチンをリポソームに封入したものを用い、第一にアクチンモノマーが重合してフィラメントが作られるときに起こるATP加水分解或いはフィラメントがリポソーム内で配列を変えることによる力学的仕事の発生の有無を調べること、第二にそれがあるなら大きさを推定する。 2 研究計画:(1)リポソームを保持して内部のアクチンに外から様々な「揺さぶり」をかけ、そのとき起こる変化を主にリポソームの形態変化として捉えるという試み。揺さぶりにはアクチンのフィラメントを壊すサイトカラシンと呼ばれる毒を利用する。(2)更にアクチンのリポソーム内での重合を追跡するためにアクチンに適当な蛍光ラベルを施し重合時におこる蛍光変化をW-microscopeによって可視化定量化する。(3)形態変化のうち比較的単純なものについて形態変化時におけるリン脂質膜の弾性エネルギー変化を見積もる。 3 研究成果:2-(1)について端緒的成果が得られた。リポソーム内でアクチンが重合すると束になりリポソームの内周に沿って並ぶ。その結果リポソームは円盤型或いはしゃもじ型という対称性の高い形をとる。ところがこのリポソームの外側に上述の毒を加えるとこれは内部のアクチンに作用し、リポソームの形が変わることが分かった。またこのとき内部のアクチンフィラメントの配列が変わったことを示唆する結果も得た。この原因が何であるかは検討中である。これまでに調べたところではアクチンフィラメントの並び方が変わったために、毒を加えるときに起こる浸透圧変化にリポソームが対抗しきれなくなったという可能性を示唆する結果を得ている。また、2-(2)について蛍光ラベルしたアクチンがリポソーム内で重合すると蛍光が変わることを顕微鏡下で確かめられる見通しがついた。
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