研究の目的:精製アクチンをリポソームに封入し重合させる系が前年度までにできた。そこでこの系を用いてアクチン重合に伴って起こる変化をより詳しく調べる。 研究計画:(1)リポソーム中でアクチンが重合するときにアクチンに結合したATP(アデノシン3燐酸)の加水分解が必要かどうかを調べる、(2)外部から電場で刺激を与え、それに対するリポソームの応答をリポソームの形の変化によって調べる、即ちリポソームに局所電場を与えて突起を出させ、イオノホアによってリポソーム内部にイオンを導入、アクチンを重合させたときに作った突起が保持されるかどうかを調べる、というものである。 研究成果:(1)に関しては現在実験は計画段階である。ATPを完全に実験系から除くのはかなり難しく、これが達成されなければ変形が果してATPのエネルギーを使ったかが分からない。現在はATPがのぞけたかどうかを調べるための分析法を検討している。(2)については、イオノホアでアクチンを重合させる部分については一応の成功を見た。イオノホアとしてバリノマイシンを用い、内部に100マイクロモルのアクチンモノマーを封入したリポソームを数十ミリモルのKイオンを含む溶液中に入れたところ、紡錘形でリジッドなリポソームが出現することが分かった。電極によるリポソーム膜伸展の方法は、再現性が悪く現在のところ成功していない。電極の形、電場の形や強さなど、制御すべきパラメータの多いのがその大きな原因で、なお検討が必要である。むしろ、予備実験からはリポソーム内に直径1μm程度のプラスチックビーズを入れてそれを光ピンセットで「掴んで」リポソーム膜を押し出す方が有望ではないかとの見通しを得ている。どちらが有利かは今後の検討に待たねばならない。
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