1.在庫がなくなり、NMR用対称型ミクロ試料管の供給ができなくなったので、ガラスメーカや試料管メーカと共同研究を行い、新しいロットの上試料管の開発を行った。その結果、ガラスの組成がNMRスペクトルに及ぼす影響が明確になり、従来より高分解能のスペクトルが得られるようになった。また製法の大幅な見直しを行った結果、製品の歩止りが向上し、安定的にユーザーに供給できるようになった。 2.マウス脳細胞を摘出し、そのホモジネートからTCA抽出を行い、可溶性成分を分離精製した。そして上記ミクロ試料管を用い、NMRスペクトルを測定した。そして部分的なスペクトル解析を行うとともに、脳内成分の定量的な評価を得る方法を検討した。 3.NMRスペクトルのオフライン解析のためのプログラムを開発し、勾配磁場などを使うとき発生する、渦電流によるスペクトルのアーチファクトの除去、溶媒信号の選択的除去、ペースラインうねりの不完全成分の除去、不均一磁場に起因するスピニングサイドバンドの除去等に成功した。 4.ラット脳スライスをそのままNMR試料管に詰め、一次元高分解能NMRスペクトルを測定することに成功した。その結果をもとに二次元NMRの測定に挑戦し、良好なCOSYスペクトルやNOSEYスペクトル測定に成功した。その結果、主要ピークはいずれも低分子由来の成分であり、脂質やタンパク質などの信号は、従来考えられていたほど強くないことが分かった。 5.ヒト脳の部分特異的スペクトルを測定し、脳内成分を定量的に測定するための予備実験として、モデル系を作った。そして実際の測定条件での信号強度と、それが本来持っている信号強度との相関をとった。
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