研究概要 |
^1H-^1Hの相関をとるCOSYおよびNOSYで水近傍の信号を定量的に取り出すには、パルス列やデータ処理アルゴリズムに特殊な工夫が必要で、生体組織に対しては、他の方法に比べて感度的に必ずしも有利でないことがわかった。種々の測定法を調査した結果、生体組織の測定法としては、CH-HMQCとSuperCOSYが有望であった。 HMQCは ^1Hの感度で ^<13>Cの分離能が得られ、生体組織中の水信号による妨害がほとんど除去でき、in vivo NMRとして極めて望ましい性質を持っていた。また測定を最適化すれば30分以内で1つのスペクトルを得られる見通しを得た。この方法で今まで存在を知られていなかったセリンの信号の帰属に成功し、また報告されている多くの帰属を確認および修正した。 主要な代謝成分のみを定量するためには、それほどピークの分離能を必要としないので、SuperCOSYが有効であった。SuperCOSYを使って、脳内の代謝物質の分布を調査した結果、生化学的方法による分析結果とよい一致を示した。SuperCOSYを使って、従来測定困難であったGABA,タウリン、イノシン酸、コリンの分析が容易にできた。 脳内の部位別に詳細に代謝物質を定量しようとすると、試料の量が極めて限られる。そこで感度よく微量試料を測定する高感度ミクロ試料管を開発した。この試料管により標準試料管の約3倍の感度を得ることに成功した。 データ処理ソフトを開発し、水信号によるベースラインの乱れや、特定の信号を特異的に除去する簡便なルーチンをつくった。また渦電流による信号の乱れを除去することにも成功した。
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