1.教員養成学部学生を被験者に、種々の領域での基本的な課題を用いて調査し、学力が剥落していく様を、どのような領域・問題において、大学段階で観察できるのかを明確にした。日本史のように密度濃く学習されているものは、剥落せず、物理のように高校段階で学習していても、入学時にすでに剥落してしまっているものもあるからである。 2.平成4年度に引き続き、教員養成学部学生を被験者に、高校までに学習し入学時には存在していた学力が、高学年になっても使用可能な程度と、大学入学前における習得法との関係を調査した。機械的暗記学習の結果はかなり剥落しており、理解して学習していたものは、学力が残存していることをより確証できた。 3.理解している状態には、暗記の状態にはない項目間の関係を必然的にする知識が付加的に存在しているという結果を得た。したがって、付加的な知識を考慮に入れれば、知識の状態で理解と理解していない状態を区別できるのである。理解しているものと理解していないものとの差は、一般的には著しいものと考えられているが、調査してみると付加的な知識のわずかな部分が異なっているにすぎない。実験的にその部分を補ってやると、出来るようになりその効果も持続する。 4.これらの知見をもとに、小学校段階で実際に理解を強調した授業の効果をみながら、理解を付加的知識によって項目間に必然性をつけることと考えてよいこと、および理解と機械的暗記が知識の状態の違いとして記述できることの理論的整備をおこなった。
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