研究概要 |
欧米流の機能主義に徹した視点から町や建物の設計や施工に重要なポイントを253の定石にまとめたC.Alexanderのパタンランゲージを詳細に検討したが、面白いことに、この定石集の中には「公園」という項目は見当らない。欧米では、「公園」というのは地域の住民や行政が必要とする様々な機能を一つ一つ解決するうちに結果として生じた空間であって、そのニーズの変化に連れてダイナミックに変化するものであるから、ニーズの方が整理されて定石に挙げられている。はじめに「公園」ありきで、後で機能を論じること自体が非常に日本的な発想であることが分かった。「公園」のニーズとして日本でも共通しており心理学的にも重要であると思われる項目を調べてみると、11項目を挙げることが出来た。1)フィンガー状の都市と田園,2)田園,3)水への接近,4)活動の節点,5)プロムナ-ド,6)コミュニティ活動の輪,7)保健センター,8)都市の子供,9)静かな奥,10)手近な緑,11)小さな広場,以上11の項目である。これらの項目を検討して見ると日本で「公園」に期待している機能の多くが,町全体の設計の中で実現されており、「公園」といった部品を町の中に入れて実現できるようなものではないことが明らかになった。特に、項目の10・11は重要で、手近な緑は、公園に求めるのではなく、表通りを平行に走る静かで木立の多い裏通りというかたちが求められており、小さな広場は、公共の建物の前に広場を作り、住民の自由な活動の場に提供することで実現すべきであると提言されている。この2項目は、日本では伝統的に神社や寺の境内が地域住民に対して提供していたものである。神社や寺の境内の機能を見直し、箱庭のような「公園」、いいかえれば、「官営の庭園」のような公園はかえって都市の機能を低下させるものである。
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