研究概要 |
相貌の認知と左右大脳半球機能との関連を知るために、事象関連脳電位(ERP)を指標として以下のような実験的研究を行った。 1.顔刺激を用いた実験 5種類の刺激(顔写真)を、被験者の凝視点の左右視角5.3゚の位置に高さ6.7゚、巾4.8゚の大きさで,無作為順に次々と呈示した。実験条件として、未知顔条件と既知顔条件の2つを設けた。被験者の課題は、刺激系列前に指示された標的顔を検出することであった。頭皮上W1、W2(左ウエルニッケ領野上およびその右半球上対称部位)導出の非標的顔刺激に対するERPを分析の対象とした。各条件につき、刺激後300-500ms間区間平均電位を算出した結果、既知顔条件では左半球上導出電位が右半球上導出のものに比べ、有意に陰性方向に大きな値を示した。未知顔条件において、実験の前半ではこの電位は左右導出間に差はなかったが、試行後半では左導出が右導出に比べ、陰性方向に大きくなる傾向が見られた。既知顔条件の結果は、顔に付随した言語情報(名前)の処理によるものと解釈でき、また未知顔条件の結果は、弁別手掛かりがパターン的なものから言語的なものへと変化していったことを示唆する。 2.パターン刺激を用いた実験 顔刺激実験では、被験者の課題遂行方策として、刺激の言語コード化が示唆された。ここではそれを確認するため、言語コード化の容易なものと困難なもの(Vanderplas&Garvinのランダム図形のうち連想価の高いものと低いもの)を用い、同様の実験を行った。これは現在進行中である。
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