1.本年度は、前年度調査を補充するための現地調査を実施するとともに、調査対象者とパソコン通信で継続的にコンタクトをとることで面接調査を補完した。前年度同様、(1)岐阜地区の草の根BBS、(2)仙台地区のBBS、(3)名古屋地区ならびに東京地区のマスターネットの会員グループを対象に、とくに電子縁コミュニティ集団の形成過程を重点的に調べた。 なお、派生的に他のいくつかのBBS関係者(とくにシスオペ)ともコンタクトをとった。 2.特定ケースのものなので必ずしも一般化することはできないが、調査から得られた知見を整理すると、 (1)パソコン通信の機能は実に多様だが、電子縁コミュニティを形成する作用をもつ点で「コミュニケーション機能」(データベースやトランザクションではなく)、とくに電子会議室の機能は特筆すべきである。 (2)電子会議室/電子メール機能によって、パソコン通信以外のメディアでは出会うことがなかったであろう多様な階層のユーザが、親しく密接に交流するにいたる経緯を具体的にたどることができた。これは異業種間時間差コミュニケーションを可能とするパソコン通信のメディア的特性によるものである。 (3)電子縁による連帯集団は、きっかけが電子縁である点が特異であるものの、そのオフラインつまり実生活上での交流は他の「同好の士」集団ととくに大きく異なるものではない。ただし、その連帯感が、ネットワーク上での時間的空間的制約から自由なコミュニケーションによって絶えず維持・強化される点は特徴的である。 (4)ただし、そのメディア的特性の故に、利用者のフレーミングや「燃え尽き」現象などネットワーク・コミュニケーションのマイナス面も目立ってきている。
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