研究概要 |
1.内外定期刊行物に掲載されたアイヌ関係資料(記事・論文・写真等)を網羅的に入手し、内容分析および資料価値評価をおこなった。資料の構成、整理の手順、分析/入力事項は、交付申請書で述べた通り。1993年末分までの資料登録を終了、容量3.9メガバイト(レコード件数5,570、うち日刊紙記事89%、週刊/月刊誌記事7%、その他3%)のデータベースを構築した(application:FileMakerII1.1jv2;FileMakerPro用にフォーマット変換可)。内容分析の結果、91の分野別フォルダー(サブフォルダーを加えて245の分類範疇)を設定し、指定キーワード数も157に増加した(任意の複数キーワードによる組合わせ検索が可能)。ただし一部のレコードについてキーワード付加が不完全なため、作業継続中。機械可読ファイルのほか、原資料を日付順に保存し、情報度の高い資料約2900件についてはハードコピーを分野別フォルダーにおさめた。 2.国際先住民年であった1992-93年を通じて、マスメディア、各種ミニコミとも「アイヌ民族ブーム」の様相を呈したが、アイヌによる自己呈示は極端に少なく(全資料の1%未満)、また発言/執筆したアイヌも数少ない特定の人々だった(スポークスマン現象)。これは大多数のアイヌウタリにとって日本社会がいまだ差別を気にせず名乗り出て発言しうる状況にはないことを意味している。全資料の実に78%が匿名記事であるなど、アイヌ問題に触れる際、「和人」側でも匿名性志向の高いことが判明した。また日刊紙報道の4割近くを占める配信記事に対して各地方紙が独自につける見出しの分析から、アイヌ民族に「(社会的に)孤立した人々」「伝統を大切にする人々」「自然と共生する人々」などのイメージが好んで付与されていること、それがアイヌ自身の呈示する民族像としばしば齟齬をきたしていることが明らかになった。 3.データベースの概要を日本民族学会で報告した(10月31日於立教大学)。本研究の資料はすべて公開し、共同利用の便に供したい。利用者への情報提供方法(資料複写、委託検索、目録出力、オンラインアクセス等)について早急に便覧を作成したい。
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