本研究の目的は、他国に類例を見ない戦後日本に特有の賃金交渉制度である春闘体制の構造と、70年代中期以降のその変化を制度的・数量的に分析することにある。あわせて、春闘の全体像を総合的に把握し、70年代中期以降のその変容の意味および春闘の将来を厳密に考察することをめざした。本年度は、まず、1955年から1989年にいたる春闘体制の興隆・発展・変容のプロセスの全体像を各年の賃金闘争の経済的背景、準備段階、および実力行使・妥結状況の特徴の注意を払いながら総括的に把握した。次に、労働省労政局調べの民間主要企業別春季賃上げ妥結額(産業別)データを用いて計量経済分析を行なった。この結果は、「研究発表」記載の2編の論文で公刊した。その結果、1967-74年と比較して1975-89年には産業間賃金波及効果の低下がみられること、その背後には、金属産業とその他の産業の間の不均等発展があることが明らかになった。
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