平成4年度の研究は、まず大企業・中小企業間における下請・系列関係の評価に関する、これまでの主な先学の理論的研究を再検討し、現在における研究課題を再整理した。 かつて、下請・系列関係は支配従属関係として把握されがちであり、事実、浮動的関係、従属的関係の側面が実態面でも強く現われていた。しかし、高度経済成長期以降、親企業の成長とともに、下請・系列企業、とくに1次下請・系列企業の一部を中心に成長、発展がみられ、親企業との企業間関係は双方にとっての組織レントをもたらすものとなってきた。いわば、協調的関係が親企業と一部の下請・系列企業間に明確化した。これはとくに自動車工業など戦後日本の高度経済成長の代表的産業としての組立加工型機械工業に顕著であった。 さらに、こうした傾向が一層顕著となった1980年代以降は、特定の大企業(親企業)から自立化する下請・系列企業も目立ち始め、下請系列関係の自立的関係への発展方向が注目され始めた。 しかし、下請・系列関係は頂点の親企業から1次、2次、3次等の下請・系列企業までを含めた、全構造として成り立っているものである以上、一部企業の動勢のみで下請・系列関係を評価するのは誤りと考えられる。 以上、本年度の研究を踏まえ、次年度以降の研究課題として、(1)下請系列関係の効率的側面と問題的側面は表裏一体のものであり、全構造的に把握せねばならないこと、(2)こうした下請・系列関係は日本企業内部の「日本的経営」と深く結びつき、企業内・企業間関係がともに日本的関係として進展していること等が、理論的・実証的に究明されねばならない点と考えられる。
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