研究概要 |
平成5年度の研究は,大企業・中小企業間における下請・系列関係の評価に関して,自動車工業,家庭電機工業の実証分析をもとに,研究を進めた。とくに,日本における大企業・中小企業間の取引分業関係が欧米諸国やアジア諸国と如何なる差異を持つか,またそうした差異が何故生じているのか等を究明した。 1.国際的にみて,諸外国において,日本のような豊富な大企業・中小企業間の下請・系列関係は発展していない。日本における業種別,規模別に縦横の下請・系列関係が構築されている状況は極めて特徴的である。 2.日本における下請・系列関係を取引関係面からみると,長期的・継続的関係が支配的であり,非契約,暗黙の合意による信頼関係など,高コンテクスト社会に規定されるものといえる。日本では継続的企業間分業関係をする理由として,長期的信頼関係が上位にあげられており,米国,欧州等との差異を示している。したがって,その取引関係は限定された少数の相手と利益・リスクを共有・回避するものとなっている。 3.日本における取引分業構造は1次,2次,3次等多段階の重層的階層構造となっており,そうしたいわば集団的に相互の資源依存による環境適合を図るものである。技術面でも「技術の集有」や新製品開発・研究開発等における深い協調関係=デザイン・インが進められている。 4.こうした特徴は企業経営において株主構造,雇用慣行,企業間取引分業関係の3側面に共通してみられる日本的特徴であり,その背景には社会,文化的構造要因がある。 以上,本年度の研究成果を踏まえ,次年度においては,【.encircled1.】企業間取引分業関係に関する,さまざまな理論的アプローチを検討し,【.encircled2.】日本的下請・系列関係の効率・公正の経済的意義を理論的に分析・考察する予定である。
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