本研究の目的は、障害者の雇用確保を中心とした課題と、所得など生活保障を中心とした課題の相互関連性を検討することであった。また、萌芽的研究として、障害者のニーズを家庭内での生活機能に限定せずに、第一に労働の問題、次に、社会参加、まちづくり、文化といった「地域の生活機能」の問題として幅広く検討した。 本年度は、障害者共同作業所と生活共同組合の提携活動の交流集会に参加するなどして、最新の情報を収集することに努めた。鹿児島では、生活ホームなどの地域事例を実際に見てまわり、障害者本人ゃ関係者からの聞き取り調査をした。広島では、認可施設へむけた作業所作りの事例について聞き取りをした。東京では、昭島市の「リサイクル洗びんセンター」の建設にむけた作業所と生協の提携モデルについて聞き取りをした。 また、これからの福祉の担い手として民間非営利組織(NPO)が注目を集めているが、そのひとつである日本生活協同組合連合会や高齢者福祉事業団の福祉活動についても聞き取りを実施し、資料を収集した。なお、障害者の個人生活を把握するための家計のアンケート調査を計画していたが、実施できなかった。 研究の結果から、障害者の生活にとって「働くこと」が特別な位置を占めており、〈雇用保障を中心とした総合的な生活支援システム〉を創ることで、「親なき後の生活」問題への対応をはじめ、それぞれの地域に「一人ひとりを大切にする」豊かな福祉社会を築くことが出来るとした。こうして、メニューの数は多いけれども基本的なニーズを充足していないとされる。わが国の障害者政策を整序する見通しがえられた。それはまた、急速に高齢化社会を抑えつつあるわが国において、「高齢障害者」問題として国民的課題になっており、特に女性の人生設計とも関わる問題であることがわかった。
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