研究概要 |
本年度は,シーメンスの対日戦略行動の解明を関連図書の文献調査を中心に進めた。また,その前提としての20世紀におけるドイツ経済および企業の発展について研究した。 ドイツ企業の対日戦略としては,工藤章氏の『イーゲー・ファルベンの対日戦略』,『日独企業開係史』といった著作あるいは,A.D.チャンドラーの“Scale and Scope"におけるドイツ企業の分析を中心に調査をすすめた。 一方,ナチス・ドイツ下の企業経営については,ベルリン自由大学のポール・エルカー教授と研究交換をし,日独における戦争経済を企業間関係の違いと類似性について議論した。この点については,1993年1月の経営史富士コンファレンスでエルカー氏のコメンテーターをつとめ,その内容は,1994年の東大出版会からの研究書の形で出版される予定である。 本年度の調査で得られた知見は,ドイツ企業の対日戦略は,その企業の経営者や所属産業によって大きく異なり,より詳細な事例分析の必要性と,戦争経済が与える個別企業の影響も産業や経営者によって大きな相違があるということであった。また,日本の統制経済とナチスの戦時経済には類似性と同様,かなり本質的な相違点もあり,今後一層詳細な研究が必要とされているということであった。 以上の成果をもとに,来年度はドイツ企業,特にシーメンスのコンピュータ事業と日本企業のそれについて組織特性を中心として比較研究を行う予定である。
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