研究概要 |
バクテリアの走化性や細胞性粘菌の集合,昆虫の集合など,化学物質の濃度勾配に感じて集まる走化性の現象は、反応拡散方程式によってモデル化できる.それは生物の密度u(x,t),化学物質の濃度c(x,t)についての非線形の偏微分方程式となる.本研究においては,この方程式の解で,周期的な空間パターンを後ろに形成しながらその先端が時間に広がっていくものについて,そのような解の存在条件と空間パターンの伝播速度を明らかにすることを目的として,本年度は主に計算機によるシミュレーションを行った. 計算機シミュレーションの結果,スポット状の周期的な空間パターンが出現するパラメータの値を見いだすことに成功し,これらのパラメータの値を変えることによって伝播の速度がどのように変わるか,パターン空間的な周期がどのようになるかが調べられた.方程式は本質的に5つのパラメータを含み,スポット状のパターンが出現するかどうかは走化性の強さを表すパラメータと走化性の化学物質の分解速度のパラメータに大きく依存していることが明らかになった.また,数値計算で得られたパターンとバクテリアの培養実験で報告されているパターンとの比較では,かなり良い一致を見ているが、細部では正確には一致していない.数値計算は偏微分方程式を差分化して行っているが,そのため,必要と思われるパラメータ値での計算がうまく進められないことがあり,数値計算法上の工夫が必要で次年度の課題である.
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