研究概要 |
研究の目的 反射星雲では、塵による赤い輻射が観測されている。これは、広域赤色輻射(ERE)と呼ばれ、中心星からの紫外線照射で塵が輻射する蛍光であると推定されている。筆者らは、これを主に急冷炭素質物質(QCC)の塵によると推定し、報告した(ApJ,1992)。塵には、炭素質の塵の他に、当然それ以外の塵主には、Si-Oを骨格とする塵の存在が考えられる。この塵の紫外線照射による可視から近赤外領域における蛍光輻射を測定し、それらの塵のEREに対する寄与を推定する。 得られた成果 Si-Oを骨格とする物質の蛍光スペクトルを測定するため、SiOガスを出発物質としてSiO急冷固体をつくり、さらにそれを空気中で酸化し、SiO_2へと変化させた。この過程の各段階における酸化度の異なるSi-O系物質の、基本的な蛍光輻射スペクトルを測定した。蛍光スペクトルは、2種のスペクトロメータシステムを用いて測定した。1つは、Arレーザ光(488.4nm、2mW)で照射し、輻射した蛍光をモノクロメータで分光し、Si検出器(500-1000nm)と冷却したGe検出器(750-1500nm)で検出した。2つめは、Hg-Xe光(313nm)で照射し、輻射した蛍光をモノクロメータで分光し、光電子増倍管(R666、R376 400-800nm)と冷却したGe検出器(750-1500nm)で検出した。生成したSiO急冷固体を石英ガラス基板上に付着させ、それを真空セル中に入れ、蛍光を測定した。つくった直後に上記の2方法で測定すると、可視、赤外域(400-1500nm)では有意の蛍光輻射は測定できなかった。長期保存後の試料、あるいは空気に曝して酸化した試料では、試料により強度は異なるが、可視域に(ピーク波長、480-550nm)、微弱な蛍光が測定された。同条件で可視域の蛍光を測定し比較すると、SiO急冷固体はQCCの1/10以下のピーク発光強度であった。これらのことから、Si-O系物質の塵のEREへの直接大きな寄与は考えられない。炭素質の塵がEREの主たる原因であると推定できる。予備的実験の測定で(ホトルミナ・ミニ、ジョバンイボン社製を使用)、得られた近赤外域の蛍光は、今回の2方法の測定では検出されなかった。
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