従来の重力不安定性理論で用いられてきた線型の断熱摂動や等曲率摂動とは異なった摂動として空間曲率摂動からの密度摂動の発生と成長をとりあげた。これは、例えば、重力波のような曲率の変動をもつが、密度摂動をもたない摂動をもとにし、一般相対論的非線型効果によって、2次的に密度摂動をもたらすものである。 観測的には、1992年に宇宙背景放射の大角度非等方性が、アメリカのCOBE衛星によってみつけられ、密度摂動の存在が明らかになってきた。しかし、小角度(10度以下の角度)については、上限値しかみつかっておらず、密度摂動の源、性質は、まだ明らかではない。小角度の摂動は、大角度のすでに測定されているものを延長したものと考えると、上限値はきつすぎるようで、このため、大角度のものとは、別の種類のものである可能性がある。 上記の空間曲率摂動は、このような別種の摂動の一つとして考慮されるベきものである。今年度のこの摂動の基本的性質に関する研究を行ない、かつ、研究会、学会で発表し、学術雑誌へも投稿して、掲載がみとめられている。 今後は、より堅固な基盤にのせて発展させるため、基礎的研究を続けていくつもりである。これまで、かなり密度摂動に注目して研究を進めたが、非線型重力不安定性理論の中の一部分を占めるものである。この理論全体の定式化によって、より充実した理論ができるので、この方面にも力を入れたいと思う。
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