銀河、銀河団等の構造形成の理論と宇宙背景放射の非等方性の観測との間の対応関係を調べることは、宇宙論のもっとも重要な仕事の一つであるが、1992年のCOBEのかそくによる温度揺らぎの検出により、新たな発展の時期を迎えつつある。当研究においては、1992年度、理論と観測の間の矛盾を解決すべく、従来の、断熱密度揺らぎ以外の揺らぎの1つとして、不規則な空間曲率の摂動によってひき起こされる2次的な密度揺らぎに注目し、振舞いを調べた。その結果および上記の観測から、空間曲率摂動の役割は、空間的に小規模の密度揺らぎに対して有効であることがわかった。1993年度においては、前年度に引き継いで、空間曲率の摂動による密度揺らぎ、および、反ニュートン近似に基づく非一様宇宙モデルの導出を行なった。また、同時に、新たな活動として、次の2つの研究活動を行なった。 1.上記の密度揺らぎによって引き起こされる構造の観測的意義について研究、および、QSOの大規模な集団化についての観測にともなう重力レンズ効果、銀河の明るさ自身および内部のダスト(宇宙塵)による(後方の天体に対する)隠蔽効果についての研究。QSOの形成に関しては、赤方変移z〜2で形成されるとするCDM理論とz>5で形成されると考える'高赤方変移ブラツクホール'の理論がある。後者が成り立つためには、(観測的には少ない)z>3のQSOを見えなくする上で、ダスト(宇宙塵)の役割が重要である。これらの問題の解決のために、これらの研究を行なった。2.構造形成特、特に高赤方変移の天体(QSO)の形成、および、重力レンズ効果についての理論と観測を比較的に研究するため、小研究会を開催(平成5年12月6、7、8日、参加者数約25名、基礎物理学研究所にて)。重力レンズ天体MACHOが発見されて間もなくであったので、研究討論は、熱中し大いに有意義であった。
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