研究概要 |
リー群SU(N)や量子群SU_q(N)の表現をN個の振動子の組{(a_i,a_j):〔a_i,a_j^+〕=δ_<ij>,i,j=1,2,‥‥,N}から構成する方法はよく知られているが,一組の振動子(a,a^+)からはどのような事が可能だろうか。代表者と分担者(山腰)はリー群SU(1,1)及び量子群SU_q(1,1)の任意の既約ユニタリ表現をaとa^+から構成する方法を見出し,次頁最上段の論文として発表した。平成5年度には中国人研究者が当機関に滞在したので,量子光学のsqueezed state(SS)に関する共同研究を行った。その結果,上述のSU(1,1)及びSU_q(1,1)の表現の構成法がSSの研究に用いられる技法と深く関連することを学んだ。これまでに得られているSSにある種の射影を施せば新しいSSが得られることを発見し,これを論文(Even and Odd two-photon coherent states of the radiation field)とした。現在投稿中である。SSの研究にSU(1,1)やSU_q(1,1)の表現を適用すれば,更に新しい結果が得られると思われるので,現在も研究を継続している。次に,当研究課題に直接関連するものではないが,本年度の研究によって得られた成果を記す。量子系のゲージ構造の研究に対してBerryの幾何学的位相の発見(1984)は大きな影響を与えた。Anandan-Aharonov及びMontgomeryはBerry位相と密接な関連を持つ距離概念を巧みに用いて,時間とエネルギーに関する新しい型の不確定性関係を得た(1990)。代表者と浜田毅は,この距離をヒルベルト空間上の射影演算子を用いて表現した。その表式は自然に一般化されて,ヒルベルト空間の2つの線形部分空間の間の距離という概念を誘起した。これから導かれる一般化された不確定性関係について,現在論文作成中である。
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