研究概要 |
φファクトリーでの実験のため,測定器に要求される性能とその実現可能性の検討を続けている。具体的には,最も厳しい条件を課すK^○→pipi過程でのCP対称性の破れ(いわゆる,Re(ε´/ε))を現在の実験精度を1桁上回る1×10^<-4>で検出する測定に焦点を合す。検出器系に次の2点の思想の実現を図ることを暗に想定している。(1)数KHzのφ放崩事象を全て収集する。これは可能な物理研究を全て測定しようとするのみならず,検出器の校正に大いに役立つデータを得るためである。高頻度のデータ収集を可能とするため,検出器を極力シンプルなものとし不可欠でない情報量の収集を行なわない。これは同時に,数10^<10>事象/年のデータを短期間に解析し,物理結果を得るためにも重要である。(2)R&Dを必要とする支端技術の導入をさけ,確実に稼動する検出器系を用いる。具体的には,荷電粒子飛跡検出器としては円筒型ドリフトチェンバーを,光子検出器としては(鉛+チェンバー+シンチレータ)で構成するファインサンプリング・カロリメータを考える。 上記過程に対しては、K゚→3π゚、π^+π^-π゚、π^±l^±ν(l=μore)のバックグラウンドを10^<-5>〜10^<-6>倍抑制する必要がある。φファクトリーの特長としての運動学的制約を用いれば、2π゚あるいは3π゚の放崩位置を高精度で知らなくとも、3π゚事象を除去可能。光子に対するエネルギー分解能=9%/√<E>のもとでも〜10^<-6>の除去因子を得られることが分かった。一方、π^+π^-π゚、π^±l^±νに対しては、運動量分解能=3%のもとでも除去因子は〜10^<-3>。それは、光子検出器がレンジ・カウンターとしても稼動し、除去因子〜10^<-2>を得られることが判明した。 今後、より詳細なシミュレーションを繰り返し、上記検出器と実現確度を高めるつもりである。
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