超イオン導電体は、ガスセンサー、固体電池などの応用が考えられ、活発な研究が行われている物質群である。その中で、AgIは、イオン導電度の大きいものとして、もっとも興味がもたれている結晶である。さらに、超イオン導電体に絶縁体を分散させると、伝導度が場合によっては1桁も大きくなることが知られている(Liang効果、絶縁体分散効果)。この効果の説明として、母体の超イオン導電体と、分散された絶縁体の境界面に伝導度の大きい層が形成され、それの寄与により、全体として伝導度が上るという仮説が提出されている。しかし、実際に境界面で何が起っているかをつきとめた研究はない。 我々はそこで、境界面の効果をとり出す手段として、アルミナ基板上に超イオン導電体の薄膜をつくることを考えた。アルミナ基板上に、Agを蒸着し、I_2の雰囲気にさらすとAgIができるが、現在までのところ、伝導度の膜厚依存性などは観測されておらず、絶縁体基板との境界面の寄与をとり出すにいたっていはいない。 そのため、改めてAgI薄膜そのものの研究を行うことにした。NaClのへき開面上にAgを蒸着し、I_2を拡散させ、電子顕微鏡による観察を行っている。 なお、平成4年度中には、AgI薄膜の他、超イオン導電体KTiOPO_4(KTP)の基礎物性の研究も行った。特に、単結晶試料を用いた伝導度の測定により、伝導度の異方性と、結晶構造との関係を明らかにすることができた。
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