研究概要 |
イオン結晶でありながら、10^<-3>〜10^0Ωcm^<-1>程度の高い電導度をもつ物質を超イオン電導体とよんでいる。代表的物質としては、AgI、RbAg_4I_5などがある。これらのイオン導電体にBaTiO_3、TiO_2等の誘電率の大きい絶縁体を分散させると、誘電率が1桁程度上昇することが知られている(Liang効果)。この現象は、絶縁体と超イオン導電体の境界(grain boundary)に電導度の高い層が形成され、イオン電流がその通路を通って流れることによると解釈されている。また、イオン電導度の上昇は、分散させる絶縁体の濃度だけではなく、絶縁体の粒径にも依存することが知られている。我々はLiang効果および粒径効果を説明できるモデルを提案してきた。 本研究の目的は、境界面、表面の影響がより顕著にあらわれるように超イオン電導体の薄膜をつくり、イオン導電率の振舞いを調べることにある。 まず、AgI薄膜は以下のようにして得られることを示した。 SiO_2,Al_2O_3下地にAgを真空蒸着する。次に、I_2ガスを流す。すると反応が起ってAgIが出来る。これは、電子顕微鏡、X線回折等によって確認した。 このようにして得られた厚さ500〜3000AのAgI薄膜について、電導度を100〜10MHzの周波数範囲で測定した。全体として、バルクのAgIの電導度より10^3程度高い電導度が得られた。またアレニウス・プロットにより、ホッピングの活性化エネルギーは0.31eVと得られ、バルクの0.5eV程度と比較して著しく小さい。上記の電導度の上昇は、この活性化エネルギーの減少で説明できる。しかし、活性化エネルギーの減少の起源は今後明らかにすべき課題である。
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