高安定高電圧電源を直列高負荷抵抗を通して半導体レーザーを駆動することにより、振幅雑音の極めて少ないレーザー光源を得る事が出来た。10^<-7>以上の安定度を得た。このレーザーを予定通りに液体He温度に冷却したルビーに照射し透過光の雑音強度を観測した。しかし使用したレーザーは量子井戸型Tosiba TOLD-9150であり発信波長の温度変化が従来のレーザーに比べて大変小さく、発振波長をルビーR_1線に同調する事が難しく、十分な測定が行う段階にない。しかし、液体窒素温度に冷却した高濃度のルビーは、吸収線幅が広く、現有のレーザーでも同調可能であったので、R_1線の線幅の温度変化を測定することが出来た。簡単な装置でしかも分光器の分解能に制限される事なく均一幅を測定出来るという本研究で提案した分光方法の有効性を確認することが出来た。他の方法で得られた均一幅と比較検討している。更に、結晶表面付近の分光を行い、内部と表面での均一幅、周波数の違いを観測している。 理論的研究では、固体の先鋭な共鳴線を持つ2準位系とレーザー光との相互作用を表す光学的ブロッホ方程式に関する計算を行った。従来固体中ではブロッホ方程式は成立しないとの理論的、実験的研究が多数なされ、定説となりつつあった。我々はこれらの論文を詳細に検討した結果、最初の実験の解釈の重大な誤りを発見し、我々は実験結果と共に発表した。その主旨は、例え先鋭な蛍光線といえども、固定中の2準位系は、周りの原子核との相互作用を考慮すると、多準位係と見なさねばならず、通常りブロッホ方程式を適用する事にそもそも無理があり、プロッホ方程式自体の問題では無い事が分かった。この問題に関する殆どの論文には、基本的な誤りがある事を示した。現在、多準位系として、正確に取り扱う計算を行い、我々の過去に行った多くの実験結果を説明する事が出来たので投稿中である。
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