半導体レーザーに含まれる周波数雑音を積極的に利用した個体の高分解能分光法を確立した。この分光法は、低温(12^0K)に冷却したルビー(Al_2O_3Cr^<3+>)のR_1線に半導体レーザーを照射し、透過光をアバランシュフォトダイオードにて検出、増幅した後、スペクトラムアナライザーにて、透過光に含まれる雑音スペクトルを測定することにより、ルビーのR_1線の分光を行う。レーザー幅はファブリペロ干渉計によれば、約60MHz(半値全幅)であったが、観測されたR_1線の均一幅は外部磁場が零の時、約200MHzであり、外部磁場増加とともに減少し、約20MHz(0.9T)まで狭くなった。この幅は温度変化をし、約35^0K以上で急激に広がり200MHzを越えた。これは、以前我々によって別の方法で行った実験の結果と一致する。この方法による雑音スペクトルの解析によって、遷移の均一幅が測定される事を示した。いままでに用いられた方法に比べてこの方法は大変簡便である。又は、極めて高感度である事も実証された。観測された最小幅は、レーザーの均一幅で制限され、最大幅は光受光器を含む増幅器の帯域幅で制限される。この方法で遷移の均一幅が得られる事は、別の方法(シュタルクスイッチ法)でも確かめた。両測定によって幅は実験誤差の範囲で一致した。 この方法をルビーR_2線の分光に応用し、配位子場理論等により予想されていた均一幅や、g因子等と実測値が一致した。得られた線幅は200MHzより広い。この遷移の詳細なデータは、今までは適当なレーザーが得られなかった事や、均一幅が広い事によって、測定することが出来なかった。今後光検出並びに増幅器の帯域幅を広げ、更にこの実験を続け、R_2線の各種パラメターをより詳しく計測して、従来の理論を確かめたい。尚、均一幅に関する理論的研究を行い結果を投稿中である。
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