研究概要 |
粘弾性物質に流体を注入したときにできる破壊をともなったパターン形成のメカニズムを明らかにするためのモデル実験をおこなった。粘弾性物質のモデル物質として用いたAgar(寒天)の粘弾性的性質の定量的な物理パラメータの計測に成功した。寒天の含有濃度をコントロールすることによって、寒天はその粘弾性的性質が変わる。0.1,0.2,0.3wt.%の寒天に関して、相対的な引き裂き強度の決定を行った。また、寒天のrelaxation testを行い粘性流動の性質を定量的に計測することに成功した。この寒天をアクリルおよびガラスによって制作した50×50cmのヘレショウセル(平行平板間のすき間は可変であるが、主に2mmで実験をおこなっている)に充たし、セル中央の小さな穴から空気を注入する実験をおこなった。この流体注入による破壊パターン形成をCCD Hi-8(Sony CCD-V800)ビデオを用いて計測した。また、一定圧力で空気を注入する圧力発生装置を開発改良に成功し、実験中の圧力の変動を0.1%以内にコントロールすることが可能になった。粘性流体でのviscous fingeringとも、一般にsingle plane carckingが形成されるような弾性体でのクラック成長とも異なる、粘弾性体でのパターン形成での特徴的な、我々がvisco elastic fingeringと新しく名付けたパターン形成の定量的な解析をおこなっている。その結果、visco-elastic fingeringはt^1のオーダーでパターンが成長していることが明らかになった。このことは、viscous fingeringがt^<1/2>のオーダーのパターン成長であるのと比較すると、破壊に支配されかつ分岐現象をともなう新しい種類のパターン成長であることが明らかになった。また、viscous fingering、visco-elastic fingering、single plane crackingのtransitionに焦点を絞ったphase diagramを完成させることができた。
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